ライブが好きだ。

好きなアーティストの好きな楽曲。

ライブハウスの独特の匂い。

初対面の仲間。

全力の歓声に全力のパフォーマンス。

柄にも合わずヘドバンなんかしてみたり。

喜怒哀楽の全てが現れる。

そんな雰囲気が好きだ。


数年前、

あるマイナーアーティストのライブに行った。

1人で行った。

とても小さなライブハウスだった。

会場入りの時、

青いリボンで髪を結んだ少女をみた。

背丈は155㎝ほど。

年齢は私より少し下くらい。

彼女も1人だった。

彼女はどこか暗さを纏っていた。

ふと、こちらをみた。

私は咄嗟に笑顔を作った。

彼女は会釈をしてまた俯いた。

その表情は読めなかった。

青空のような綺麗なリボンが印象的だった。

ライブが始まる。

周りのおじさん達は少年のようにはしゃぐ。

その表情にふざけは一切ない。

本気の形相だ。

ライブは人を変える。

奥底のマグマが爆発したかのよう。

ダンジョンのように暗い箱は、一瞬にして熱気に包まれた。

この人たちが、この空間が大好きだ。

私がライブを好きなのはこういうことなのかもしれない。

そんなことを考えている暇はない。

私もプライドというリミッターを外して少年になる。

そこからの記憶はほとんど残っていない。

ライブが終わる。

おじさん達と褒めるだけの感想を言い合う。

無駄で心地のいい時間。

それも終わると会場を出る。

「そういえば、彼女はどんな風にライブを楽しんだのだろう。」

会場を出て一番最初に思ったのはこれだった。

辺りを見渡しても彼女の姿はない。

あの無駄な時間は過ごさずに帰ったのかな。

この時は深く気になることもなかった。

1年後、彼女と再会するまで思い出すことすらなかった。

大学3年生の冬、というか春休み。

一人で福岡に行った。

特に理由はなかったが一人でどこかに行きたかった。

福岡を選んだ理由も特にない。

強いていえばラーメンを食べたかった。

彼女を見つけたのは駅中の博多ラーメンの店。

ある女優に似ていたのですぐにわかった。

臆病者の私が声をかけるなんて出来ない。

そのままスルーしてその場を後にした。

青いリボン。

ホテルに戻ってもそのことばかり頭に残っていた。

翌日、福岡の友人と遊んだ。

彼に同じ話をすると、そのラーメン屋に友達が働いているという。

結論から言うと、その友達というのがあの少女だった。

年齢も出身も私と同じだった。

福岡の大学に通っていたらしい。

「奇跡ってあるんだな」

無意識に口から本音が漏れていた。

それを聞いた友人が私に告げる。

「今から来れないか聞いてみようか?」

そんなことはお願い出来ない。

向こうからしたら知らない人なわけだ。

私が一方的に気になっているだけ。

彼女にも友人にも迷惑がかかる。

人に迷惑をかける人間にだけはなりたくない。

大学1年生のときに誓ったのだ。

この場でお願いをしてしまうと迷惑になってしまう。

自分のエゴだけで動くような人間にはなりたくない。

長々と否定の理由を作った後にキッパリと言ってやった。

「頼む」

連絡がついた。

ちょうど暇をしていたらしい。

14時に天神駅で集合することになった。

友人の家から電車で20分程度。

先について彼女を待っていた。

不思議と落ち着いていた。

正直もっと緊張するものだと思っていた。

博多ラーメンを食べ終わった時からずっと、

頭の中は彼女のことでいっぱいだったのだ。

一目惚れかと思っていたくらいに。

それが遂に会えると思った途端、

ドキドキするはずの心臓が静かなのだ。

死んだのかとさえ思ったくらい。

彼女が到着した。

友人に連絡が入った。

スマホを耳に当ててこちらに向かってくる女性がいた。

あの子だ。

どんどん近づくに連れて私の心臓が動き始める。

今になって緊張してきたとかそういうわけではない。

こちらに歩いてくる彼女を見て、

私はあることに気がついた。

続く

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