公園に転がっている空き缶を見て「誰かの喉が潤った証」と思う。

近所の夫婦喧嘩を見ると、「昔の女性差別じみた亭主関白の時代は無くなった」と思う。

私は別角度が趣味になっている。

ポジティブとかネガティブということではない。

発想を転換させる。

時には見上げて、時には見下ろす。

角度を変えて物事を見るのが楽しい。

あるきっかけからこうなった。

大学生時代、西洋美術館によく通っていた。

世界遺産登録されてからは全然行っていない。

私は絵画が好きだった。

眺めているだけで引き込まれていく魅力に何度も心を打たれた。

大学の講義で芸術についてのものがあると聞き、モグって講義に参加した。

テーマは『ガウディ建築』。

芸術的にハゲた教授が教壇に立つ。

建築は眼中になかった。

ガウディはサグラダファミリアくらいしか知らない。

少し期待はずれ。

そう思ったのは最初の10分だけだった。

面白すぎる。

講義を終えた私はその足で旅行会社に向かった。

すぐさまスペイン行きの飛行機を予約して翌週にはバルセロナにいた。

住むところも食べるところも現地で探した。

夜は必ずバルに行った。

2日目人の少ないバルに入る。

隣に座ってきたおじさんと話す。

「スペイン人は夜遅くまで遊んで、朝エスプレッソを一気に飲んで仕事に行く。」

スペイン語はもちろん、英語もさっぱりの私に、翻訳アプリが教えてくれた。

その後おじさんの友達がゾロゾロ集まってきて宴会状態になった。

それにしても元気で陽気で温かい人種だ。

その時の私の感想はこんなものだった。

翌日、街観光を終えた後、また同じバルに行った。

昨日とは違うおじさんが近づく。

この人は非芸術的にハゲている。

散らかっているという表現がぴったり。

気さくなおじさん。

アプリを介してなんとなく聞いてみた。

「なんでスペイン人はこんなに元気なの?」

髪がないおじさんが間髪入れることなく答えた。

「コーヒーがうまいからだよ。」

おじさんは笑っていた。

4日目、別のバルで店員さんに同じ質問を投げてみた。

「オリーブが美味しいからだよ。」

5日目、レストランでも同じ質問を投げてみた。

「ダンスをしているからだよ。」

全員即答だった。

一つの問いに対して様々な角度で『答え』がある。

そしてそれは『答え』であるため全て正しい。

この時点で私はヒントを得ていた。

8日目、念願のサグラダファミリアに行った。

異次元の美しさだった。

東に回れば生誕のファサード。

西に回れば受難のファサード。

大理石を基調とした内装でステンドグラスが輝く。

未完成なのにどこを切り取っても美しい。

『多角的視点』

10日間の旅行で得たものの一つだ。

帰国後、別角度が好きになっていた。

ヤンキーやギャルを見れば東大合格の可能性が高くて羨ましいし、

大怪我をした人を見れば武勇伝が一つ増えたんだなと思う。

独身女性を見れば婚活パーティという楽しいイベントが待っていて羨ましいし、

親とはぐれた少年を見れば大冒険が始まる予感しかしない。

私のは『多角的視点』という大そびれたものではないかもしれない。

ただここは、モノは言いようの世界

人間が頭の中にあるものをそのまま他人に伝えるには限度がある。

ツールとして使えるのは、会話とジェスチャーしかない。

同じモノを見ても発言によって捉われ方が違うなら、

モノをウラ側からつくように言語化したい。

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